◆◆◆紙と出会うまでの時間◆◆◆
大学時代の版画のリトグラフの小作先生の言葉で、どれだけ時間をかけた版も 簡単に作った版も摺る時の時間は変わらない、というのがあってこれは最近になってもなるほど と思う。
版と紙をプレス機に通して刷取る時にかかる時間が同じならばその前に版に向かって できるだけのことをしておいた方が良いという意味だと思う。数カ月かけた版も1日で作った版も 紙と出会って別れるまでの時間は同じ。CGも同じで、作ったデータを出力センターに出せば出来 上がりの時間に大差はない。
ただ、Illustratorのデータからプリントするにはベクトルのパスを展開するのに時間がかかったり エラーが起こったり予想外のトラブルもあり得る。描いた線の密度を出力機器が解釈する時に、 描いた筆跡を追うように「これは少しややこしい・・」とか「OK!ぜんぜん大丈夫!」てな ことになっているのだろう。
作ったデータをプリントする機器は非常に素直である。それがどんなに複雑であろうが、 シンプルであろうが間違っていようが消し忘れたゴミがあろうが、そこに在ったものを出す。 だから絵がどう在りたいかは自分で決めて、決着をつけておかねばならない。
絵を作る時に想うのは、これで完成と想うまでできる限りのことをしたいということ。 できたものをCDRに焼くのもあっという間だし、出力屋さんも「数時間後にはできますよ」と 言ってくれる。結果が出るまで残酷なほどスピーディなのだ。 頭の中はさっきまで描いていた作品のことでコッテリしているのに、プリンターはガチャ ガチャっと迷いなく誠実な仕事をする。
だから、手の出せるうちに出せる手は出すというのが絵描きのできること。これは少し往生際 が悪い私の言い訳かもしれない。
|